毎週述べ50人くらいの現役&元ホームレスや生活困窮者に会う仕事の中で直接見聞きした事をお届けする「貧困正味の話」。
今回お届けするのは「ホームレスの実態」。
- ホームレスや生活困窮者って実際はどんな人?
- どんな人がどのくらいの割合いるの?
少しでも気になったことがある方はぜひご覧ください。
数回しか会ったことが無い人だとホントのところが分かりにくいので「人となり」が分かるくらい継続的に会っている100人に絞って調べてみました。
ホームレスに対して偏見や間違った認識を持った人が減るために、そして正しくホームレスに向き合う人が増えていってもらえるように、少しでも多くの方に見てもらえたら嬉しいです。
ココがポイント
全体的な傾向や一般的なケースではない「正味の話」を覗いてみたい方はぜひご覧ください。
もくじ
【解説】こんな感じでカテゴリー分けしてみました【ホームレスの実態】
- 本人に事情があるorない
- ちゃんとしてるorちゃんとしてない
大雑把な分け方なのですが、こんな風に現役&元ホームレスや生活困窮者の人たちをカテゴリー分けしてみました。
調査結果をより分かりやすく見てもらうために、それぞれのカテゴリーについて少し説明しておきたいと思います。
本人に事情があるorない【カテゴリー分け①】
- 障害(精神・身体)の有無
- 知能指数の高低
- 依存の有無
- 病気の有無
例えばこのような部分で本人に何かしらの事情(内的要因)があるか無いかを考慮しました。
障害(精神・身体)の有無【本人に事情があるorない】
障害認定を受けている人はもちろん、認定を受けてなくても社会にハードルを感じるくらい生きていくことが大変な人は「本人に事情ある」に含めました。
特に障害がない人や精神疾患の兆候が多少あっても最低限の社会生活が送れそうな人は「本人に事情なし」に含めました。
ココがポイント
ホームレスの中には確実に障害認定が受けられるような人であったとしても障害認定自体を知らない人であったり、生きる気力を失って申請するという考えすら持ってない人などが少なからず存在します。
知能指数の高低【本人に事情があるorない】
勉強の出来不出来、想像力と創造力、思考の瞬発力、知識量などなど「頭」に関する能力が低く見受けられ、一般的な仕事や社会生活が難しそうな人は「本人に事情ある」に含めました。
一般的な仕事や社会生活が最低限できそうであれば本人に事情なし」に含めました。
依存の有無【本人に事情があるorない】
酒・たばこ・ギャンブルなどの重い依存だけでなく、日常生活動作などあらゆる事を他人にやってもらわないといけないくらい他者への依存度が高い人なども「本人に事情ある」に含めました。
能力的にも精神的にも何かに強く依存する必要が無い人は「本人に事情なし」に含めました。
病気の有無【本人に事情があるorない】
社会生活ができないような重い病気がある人や病気のせいで仕事を失ったり人生が狂っている人などは「本人に事情ある」に含めました。
特に病気がない人は「本人に事情なし」に含めました。
ちゃんとしてるorしてない【カテゴリー分け②】
感覚的な話ですが「人として」ちゃんとしているか否かを考慮しました。
ちゃんとしてる【ちゃんとしてるorしてない】
いわゆる「常識的な人」です。
言ってることも考え方も常識的ですし、常識外れの変な行動をしない人たちです。
ちゃんとしてない【ちゃんとしてるorしてない】
いわゆる「非常識な人」です。
ルールや約束は守らないのが当たり前で場合によっては普通に犯罪に手を染める人もいます。
他人に対しての思いやりや優しさが欠けている、人が嫌がる事をしても気にしない、もしくは気付いてない人もいます。
行動や言動、衛生面などいろんな面で他人が迷惑に感じるくらいだらしない人もいます。
意識的か無意識的かに関わらず人に害を及ぼすことが多々あります。
ココがポイント
- 本人に事情があるorない
- ちゃんとしてるorちゃんとしてない
これらを組み合わせて4つのカテゴリーに分けて分類しました。
その結果をご覧ください。
【調査結果】ホームレスの実態を調べてみました【貧困正味の話】
本人に事情がある | ちゃんとしてる | 49人 |
ちゃんとしてない | 30人 | |
本人に事情がない | ちゃんとしてる | 14人 |
ちゃんとしてない | 7人 |
現役&元ホームレスや生活困窮者に「どんな人がどれくらいの割合いるのか」を調べたところ、このような結果になりました。
それぞれのカテゴリーについて深掘りしてご紹介していきます。
第1郡:本人に事情がある&ちゃんとしてる 49人
現役&元ホームレスや生活困窮者100人のうち49人が「本人に事情がある&ちゃんとしてる人たち」でした。
ほんの一例
- 採用してくれる会社が見つからず仕事は日雇いの肉体労働だけ
- 稀に就職できてもいじめに遭ったり労働環境が劣悪だったり
- ブラックな環境で身体を壊したり精神を病んで退職
- 収入が途絶えたことで住まいを失う
- 精神疾患や失業が原因で家族関係が悪くなり家を飛び出す
- 家庭環境が悪く幼い頃から親族をたらい回しにされてきた
- 仕事を探しに上京してきたのを最後に親族と疎遠になる
- 精神疾患や知識不足などでアパート入居の方法が分からない
- 保証人や緊急連絡先がなく住まいは10年以上ドヤやネカフェ
などなど
人によっていろんなパターンはありますが、精神疾患などに対しての社会や会社の理解の低さ、元々の家庭環境の悪さなど「自分ではどうにも出来ない部分」が原因でホームレスや生活困窮状態になっている場合が多く見受けられました。
そんな中でもこの第1郡の人たちは言動・行動・考え方などはものすごく常識的。
理不尽に非難されたとしても他者を責めることはありませんし、常に周りに配慮しながらひっそりと生きています。
ただ、暗い過去があったからなのか後ろめたさのせいなのか、行き過ぎなくらい「自分の方が悪いから」と考えがち。
- どうせ悪いのは自分
- 自分なんてどうでも良い
- 生きていてもしょうがない
- 自分が傷ついて済むならそれで良い
などなど
精神疾患から来る無気力さや酷い目に遭ったことによる絶望などで自暴自棄になっているという事もありますが、「自分には価値がない」と自分自身を軽く扱う傾向があります。
過去に散々ヒドイ目に遭ってきているのに、更に傷つけられることがあったとしても黙ってガマン。
誰かが困っていたら「他人のためなら」と進んで自分を犠牲にする人たちです。
個人的な意見【第1郡:本人に事情がある&ちゃんとしてる人たち】
ワタシが知っている人たちに限って言えば、この第1郡の人たちは「叩かれるべきではない人たち」ばかりです。
こういう人たちこそ正に「社会の被害者」と言っていいんじゃないでしょうか。
他人に責められるような所は全くないのに他者から理不尽に責められる事がまだまだあるので彼らに救いが欲しいものです。
第2郡:本人に事情がある&ちゃんとしてない 30人
現役&元ホームレスや生活困窮者100人のうち30人が「本人に事情がある&ちゃんとしてない人たち」でした。
ホームレスや生活困窮状態になった原因は第1群の人たちとほぼ同じですが、第1群の人たちと違うのは社会生活が不可能もしくは非常に難しいレベルで言動・行動・考え方に問題がある点。
ほんの一例
- 約束は破る
- 時間は守らない
- ルールは守らない
- 借金は踏み倒す前提
- 隙あらば置き引きを狙ってる
- 落ちてるお金は躊躇なく懐に入れる
- 寝ている他のホームレスの財布を盗む
- 受けた支援を個人的な好意と勘違いしてストーカーになる
- 勘違いだと指摘すると「あの人(支援者)がオレに好意を持ってるのが悪い」と的外れの逆ギレ
などなど
元々そうだったのかホームレスになる過程で少しずつ性格が変化していったのかは不明ですが、彼らの行いによって他者に被害が及ぶことが多々あります。
その反面、彼らの背景や事情を考えると一概に本人が悪いとも言い切れない部分があるので、ある部分では社会の被害者とも言える人たちです。
個人的な意見【第2郡:本人に事情がある&ちゃんとしてない人たち】
ワタシが知っている人たちに限って言えば、この第2群の人たちは「場面ごとに細かな見極めが必要な人たち」です。
考慮されるべき部分と厳しく罰せられるべき部分が混在しているので、彼らに対するアプローチには見極めが必要となります。
ココがポイント
ホームレスを無条件に叩く人は彼らの経緯や背景などを考慮せずに(もしくは知らずに)、彼らの特殊性だけを指摘して攻撃します。
また、ホームレスを無条件に支援する人は彼らの問題行動を見て見ぬ振りし、困窮者だからという大義名分を掲げて全てにおいて支援します(ワタシが知る限り)。
これらはホームレスへの攻撃や支援が的外れになっている原因でもあり、攻撃派と擁護派の議論がすれ違ってしまう原因にもなっています。
第3郡:本人に事情がない&ちゃんとしてる 14人
現役&元ホームレスや生活困窮者100人のうち14人が「本人に事情がない&ちゃんとしてる人たち」でした。
身体や精神に障害が無い、その他の内的要因も特に無い(あったとしても社会生活に支障がほぼ無い)人たちで、言動・行動・考え方が常識的です。
おそらくほぼ100%の人が「全然普通の人やん」「むしろちゃんとしてる人やん」と思えるくらい普通の人たちなので、緊急連絡先さえあれば部屋を借りることも就職することも、そして仕事を続けていくことも難しくはないでしょう。
そんな人がなぜホームレスになったのか?
原因はホントに人それぞれですが、
- 信じてた人に裏切られた
- 職場や学校などでいじめを受けた
- 過酷な労働環境で心身共に疲弊した
などのせいで仕事・人間関係・そして人生そのものがどうでも良くなったケースをよく耳にしました。
生きる気力を失うくらいに傷ついた経験がありながらも精神を患わなかった人たちです。
言動・行動・考え方に知性や品性があり、話していて学ぶことが多くあります。
他人に対する思いやりや優しさもあり集団の中での身の振り方や判断も適切なので、本人がその気なら仕事はすぐに見つかるでしょうし重要なポジションにもすぐなれることでしょう(ワタシが知っている人たちは)。
そうなれる未来を捨ててしまうほど心に傷を負ったにもかかわらず精神疾患を患わなかったため、むしろものすごい苦しみの中で生きている人たちという印象があります。
個人的な意見【第3郡:本人に事情がない&ちゃんとしてる人たち】
ワタシが知っている人たちに限って言えば、この第3群の人たちは「何があっても決して叩かれるべきではない人たち」です。
- 自分ではどうにも出来なかった事が原因でホームレスになった
- 支援を受けられるのに「自分なんかより他の人を」と人に譲る
- 全く窓外れな批判を受けても黙って耐える
こういう人たちが理不尽に叩かれているのを目にすると非常に心が痛みます。
ポイント
ホームレスを無条件に叩く人には、中にはこういう人たちがいるという事を知ってもらいたいです。
支援する人には、こういう人たちを早く助けてあげてほしいです。
第4郡:本人に事情がない&ちゃんとしてない 7人
現役&元ホームレスや生活困窮者100人のうち7人が「本人に事情がない&ちゃんとしてない人たち」でした。
特に精神疾患などを患っているワケでもない上に考慮されるべき背景なども無いのですが、言動・行動・考え方が非常識で日常的に周囲に害を及ぼし続けます。
にもかかわらず他者に要求することには際限がなく、
- 物は貰って当たり前
- 面倒くさい事は人にやらせる
などのように人の善意を搾取し続けます。
嫌な事からは逃げ、全てを他人のせいにして、やることなす事だらしなく、周囲に迷惑をかけまくる。
このような自分の行いが原因で周囲に受け入れられなくなったので、ホームレスになったのは完全に自業自得と言えます。
しかもこういう人たちは他人を利用したり搾取しながらズル賢く生活しています。
支援の緊急度も深刻度も高くないにもかかわらず、本当に困っている人を押しのけて我先にと支援を受けに来ます。
感情抜きで客観的に見ても「困っている人は助けなきゃ」とはとても言えないくらい救いようのない人たちです。
ココがポイント
悲しい現実ですが、中にはこういう人もいるのです。
真の社会不適合者ってこういう人たちのことを言うのかもしれませんね。
個人的な意見【第4郡:本人に事情がない&ちゃんとしてない人たち】
ワタシが知っている人たちに限って言えば、この第4群の人たちは「叩かれて当然と言われても仕方ない人たち」です。
こういった人たちは「多額の支援を受ける→突然失踪する→何事もなかったかのように戻ってくる→また支援を受ける」を繰り返すので、その支援に手間も時間もお金も膨大に必要になってきます。
どう考えても同情の余地が一切ないと言って差し支えない人たちです。
こういう人たちのせいで叩かれるべきではない人が巻き添えを食って叩かれているのを見るとやるせない気持ちになります。
ココがポイント
ワタシがどうしても納得できないのは、よく考えていない団体がこういう人たちに躊躇なく多額のお金を投入して支援していること。
そしてその財源のほとんどは団体に集まった寄付金。
寄付してくれた方の善意が無駄遣いされているのを見るのは非常に心が痛くなります。
ホームレスへの偏見や間違った認識による弊害
ご覧いただいたように、ホームレスの中には限られた範囲の中だけで見てもこんなに色んな人がいます。
手厚く守られるべき人がいる反面、厳しく糾弾されなければいけない人もいるので「ホームレスだから」と一括りにすることは不可能なのです。
ホームレスというだけで見境なく叩く攻撃派の人は、自分ではどうしようも出来ない事情を抱えている人がいるという事を知らないのでしょう。
弱者だからと無条件に助け舟を出す擁護派の人は、中には周囲の人にとって害にしかなってない人間がいるという事を知らないのでしょう。
攻撃派と擁護派で議論になった時に話がすれ違う事があるのは、お互いが想定しているホームレス像にズレがあるのでしょう。
ホームレスへの偏見や間違った認識によって以下のような弊害が生まれているのです。
- 守られるべき人が叩かれている
- 守られるべき人に支援が行き届いてない
- 支援されるべきではない人に手間・時間・お金が無駄遣いされている
- 支援者が指摘しないため問題行動に歯止めがかかってない
- 攻撃派と擁護派の間で議論になる時にすれ違いが起きている
まとめ:正しく向き合うために【ホームレスの実態】
ホームレスの実態と、その認識の薄さによって生まれている弊害についてご紹介してきました。
本人に事情がある | ちゃんとしてる | 49人 |
ちゃんとしてない | 30人 | |
本人に事情がない | ちゃんとしてる | 14人 |
ちゃんとしてない | 7人 |
世間では「ホームレス」と一括りにして語られることが多く見受けられますが、ご覧のように実に様々な人がいるのです。
「ホームレスとはこんな人だ」という世間のイメージは、実は断片的な認識でしかない上に人によってバラバラなことがほとんど。
見境なく彼らを攻撃する人がいたり、無条件に有益でない支援をする団体があったり、また彼らについて議論する時に話が噛み合わなかったりするのは、正しい認識が浸透していないことが原因の一つなのです。
当然のことながら彼らホームレスも一人一人が人格を持つ別々の人間。
彼らホームレスへの理解が深まり、「ホームレス」と一括りにすることなく、一人の人間として彼らと向き合える人が増えてもらえたら幸いです。