毎週述べ50人くらいの(現役・元)ホームレスや生活困窮者に会う仕事の中で直接見聞きした事をお届けする「貧困正味の話」。
今回のテーマは「良くない支援団体が便利な理由」
貧困支援界隈で数年働いて知ったその理由をご紹介します。
実際に見聞きした団体に限られているのでレアケースかもしれませんが、こういう団体があるのも紛れもない事実の一つです。
ココがポイント
全体的な傾向や一般的なケースではない「正味の話」を覗いてみたい方はぜひご覧ください。
もくじ
良くない支援団体が便利な理由【悪用厳禁】
理由その1:約束・ルールを破る人を放置する【良くない支援団体が便利な理由】
良くない支援団体は約束やルールを破る人を放置しがちです。
- 問題行動や違法行動をした人にダメな事だと教えない
- 他人に迷惑をかけた事に対して注意しない
こんな感じなので、「面倒くさい事をとやかく言われたくない」という場合に便利に利用できるでしょう。
本来の支援団体とは
本来であれば、支援団体の中でも「貧困からの脱出」を掲げる団体はホームレスや貧困当事者には自立を促します。
深刻な状況であれば、まずは困窮状態から脱出するために食事や居場所(シェルターなど)、衣類などを支援します。
その後、生活保護申請の同行や役所の手続き(住民登録など)のお手伝い、入居へ向けての手続きや準備のお手伝い、金銭管理が苦手な方への家計相談など生活基盤を整えるための支援に移っていきます。
そして、労働が可能な年齢や体力、精神状態の人には就労を促して社会復帰へと導いていきます。
その中で、人として社会の中で生きていくために必要なこと(礼儀やマナー含む)は当然の事として伝えていきます。
ココがポイント
ただし、ホームレスになる過程で心に深く傷を負ってしまっていたり著しく体力が落ちていたりしてあらゆる事が普通にできない場合には、状態を見極めながら当事者にとって無理のないように支援を進めていきます。
また、ケガや病気、障害などで就労が難しい場合は、それぞれに合った支援につなげます。
良くない支援団体の場合だと
良くない支援団体の場合だと、人として社会の中で生きていくために必要なこと(礼儀やマナー含む)などは全く伝えないだけに留まらず、社会復帰へ導かない事もしばしば。
それどころじゃないくらい疲弊している人であれば、ある程度そっとしておく事は必要になってきますが、ただ単にだらしない人間であってもほったらかしです。
ホームレスの中には約束やルールが守れない人も多く、役所や入居の手続きを無断キャンセルすることも少なくないのですが、そんな時にも特に指摘しません。
そんな団体に出入りしているホームレスや当事者は人間的に問題がある状態が改善されないため、社会復帰どころか状況の改善すら一向に見込めません。
これでは自立ができずに支援が永遠に続いてしまうため寄付金や寄付品が無限に必要となっていきます。
人から貰った大事な寄付金や寄付品が無駄に使われている事も少なくなく悲しい現実となっています。
ココがポイント
この背景には、支援団体のスタッフが何となくの考えで単純作業的に支援している事があるようです。
「ホームレスは大変だから」「貧困は助けなきゃ」と深く考えず表面的な作業として仕事をしている限りこんな支援は減っていかないでしょう。
その団体に寄付してくれた人々の想いが無駄に浪費されているのを見ているとやりきれない思いに駆られます。
理由その2:何でもかんでもやってくれる【良くない支援団体が便利な理由】
良くない支援団体は何でもかんでもやってくれます。
やりたくない事や難しい事を代わりにやってくれるので
- ラクをしたい
- 面倒くさい事はやりたくない
- 何でオレがこんな事(自分の事なのに)やらなあかんねん
という場合に便利に使えるでしょう。
本来の支援団体の場合だと
ちゃんとしている支援団体の場合だと「必要な支援」をします。
手が不自由な人の代わりに手を使う作業を手伝ったり、読み書きが苦手な人には寄り添って手伝ったり。
機械関係が苦手な人には一緒に調べながら作業を手伝ったり、対面の手続きなどが苦痛な人には付き添って支えたりします。
どの場合でも「足りない部分を補うために必要な支援」という点で共通しています。
良くない支援団体の場合だと
良くない支援団体の場合だと文字通り「何でもかんでも」やってくれます。
- 代わりにこの書類書いてほしい
- 代わりに役所に電話してほしい
- 代わりに買い物してきてほしい
こんな風に丸投げ的に頼んでくる人もいれば、10年以上も「ネット通販で注文してほしい」と頼み続けている元ホームレスもいます。
年齢的に難しかったり事情があってできない場合ならもちろん必要なお手伝いになるのですが、全くそんなワケでもない人に時間も労力も無駄に浪費しています。
- それくらい自分でやりなさい
- 自分の事はまず自分でやりなさい
どこかでこのように言わないと、その人はいつまで経っても変わらないでしょう。
こんな事で仕事をしている気になっている支援スタッフを見るのもやりきれません。
ココがポイント
支援団体はその財源のほとんどが寄付金という団体も多いので、もちろんスタッフの人件費も元々は寄付金。
必要ない事に振り回されているその1分1秒に寄付金が無駄に消えていくのを見るのは何だか悲しい気持ちになります。
理由その3:収入の限定を推奨している【良くない支援団体が便利な理由】
良くない支援団体は、元ホームレスや元生活困窮者で今は生活保護を受けている人に対して収入の限定を推奨することがあります。
「何もせずにタダで貰えるお金を減らしたくない」という場合に便利に使えるでしょう。
もっと詳しく
生活保護を受けながら働いていると、給料の金額に応じて生活保護費の返還が求められます。
給料が増えると受け取れる生活保護費が減るので「働くのは○○円までにしましょう」と指導することがあるのです。
本来の支援団体の場合だと
元ホームレスや元生活困窮者が生活保護につながった場合、次のステップとして社会復帰に向けた支援をします。
働ける人には仕事探しを手伝ったり、高齢者や障がいがある人には施設や利用可能な支援へとつなげたり。
ココがポイント
健康状態や精神状態が良くない方であれば病院やクリニックを探しますし、回復が最優先の方であればしばらくゆっくり休むように勧めます。
当事者の状態を考慮しながら働く量を段階的に増やしていくように勧めることはあるかもしれませんが、「働くのは○○円までにしましょう」と積極的に制限することは自立支援に反することなのでモラルのある団体ではやらないでしょう。
良くない支援団体の場合だと
良くない支援団体の場合だと「働くのは○○円までにしましょう」と指導しますし、当事者の方から「生活保護費を減らしたくない」と相談されたら積極的に策を講じます。
- 生活保護は権利だから
- 貰えるものは貰い続けよう
- 貰った金は好きに使う権利がある
こんな言い訳を一緒にしてくれるので、ラクをしたいだけの人にはとても心強いのではないでしょうか。
しかも、指摘されたら「働くか働かないかは本人が自分の意志で決めること」と主張する始末。
「自力での生活に向けて着実に進んでいる」という証になるので生活保護費が減る事は喜ぶべき事であるはずなのに、「貰える金額は全額しゃぶり尽くそうぜ」という支援団体は間違っていると思うのはワタシだけでしょうか。
「自立支援」を謳っているのなら自分の稼ぎで生活できるようにサポートすべきだと思うのですが・・・
寄付金・寄付品・税金などがこんな支援団体や当事者によって搾取されているのを見ると悲しさを感じます。
ココがポイント
確かに生活保護として受け取る金額は減りますが、その分仕事で稼いでいるので手取りが減るワケではありません(むしろ就労控除があるので手取りは増えます)。
それ以前に、本来なら自分で稼いだお金で生活するのが自立の一つの形なので貰う金額は少しでも減っていくべき。
生活保護はどこまで行っても「貰ったお金」であり「他の誰かが生み出したお金」なのです。
理由その4:脱税を見逃している【良くない支援団体が便利な理由】
支援を受け続けて住まいや仕事を得て自力で生活費を稼げるようになる人も中にはいます。
ココがポイント
仕事の中には労働契約を交わさない低賃金の仕事もあるのですが、そんな仕事でも生活保護以上の金額を稼ぐすごい人もいるのです。
そういう人に対して、所得の申告や納税が必要だと積極的には告げず脱税を見逃している支援団体もあります。
- 稼いだ金は全部懐に入れたい
- 税金で給料が持っていかれるのはイヤだ
という場合に便利に使える支援団体でしょう。
本来の支援団体の場合だと
納税は「国民の義務」。
納税の必要性はしっかり伝えます。
というより、この国に住む者としては当たり前の事なので支援団体であるかどうかに関係なく人として当たり前の事を伝えます。
しっかり伝えた上で納税の義務を怠るのなら、それは完全に本人の判断であり自己責任。
支援団体、というより関りを持つ者としての説明責任は既に果たしているので、罪を問われたら本人が自分の責任として償っていく必要があります。
良くない支援団体の場合だと
良くない支援団体は、事務所内に「税理士をお招きして確定申告相談会を開催します」と掲示したりして表面的には納税の必要性を周知しているように見せています。
しかし実際は、
- 希望者がいなければ開催しない
- いたとしても「申告するかどうかを決めるのは個人の自由」と言う
といった感じで完全に受け身です。
公的支援など役所や自治体に対しては申請主義を非難しますが、こういう手間がかかるようなことに対しては自らも申請主義を貫いています。
また、「申告するかどうかを決めるのは個人の自由」というのは大いに違和感を感じます。
国民の義務を個人の自由で決めていいのでしょうか?
支援団体の本来の役割とは【良くない支援団体が便利な理由】
深刻な困窮状態なのに救われない人がしばしばいるのが公的支援が十分でない証。
こんな事もありました
2007年7月に北九州市で、餓死で亡くなった52歳の男性が自宅で発見されるという事例がありました。
「おにぎり食べたい」と書かれた遺書もあったそうです。
この方が自ら生活保護を辞退したとも言われていますが、具体的な背景は知る由もありません。
しかし、死因が餓死であったことを考えると公的支援が不十分だったのは明らかでしょう。
「セーフティネット」と言われることからも分かるように、公的支援には網のように穴が開いているのです。
それを補っているのが有志の支援者であったり民間の支援団体であったりするのですが、その役割の一つは「苦痛を減らすお手伝い」をすること。
そしてその中で自立支援を謳っている団体には「自立へと導くサポート」をするという役割も加わってきます。
ココがポイント
当事者本人の負担を肩代わりしてしまい、本人がやるべき事を減らしてしまっては、その人が自立に近づくことは困難でしょう。
たとえ善意であったとしても、貧困や困窮状態から抜け出せない活動しかしていないなら「貧困層をターゲットにしていて、かつ貧困からの脱却に資することなく、貧困を固定化する」という貧困ビジネスの定義に当てはまります。
- 貧困支援
- 自立支援
- 困窮者支援
これらを謳うのであれば「貧困層をターゲットにし、貧困が固定化しないように貧困からの脱却に資する」のが本来の役割であると思います。
まとめ:時にはグレーな手法が必要な場合もあるかも【良くない支援団体が便利な理由】
良くない支援団体の問題点が数多く出てきましたが、そんな団体を非難することが目的ではなく「良くない支援団体が便利な理由」をお伝えすることがこの記事の目的。
公的支援の条件や社会のルールに沿っていては八方塞がりになることもしばしばあります。
ココがポイント
残念ながら正攻法では救われない命や生活もあるのです。
そんな時に、やむを得ずこういうグレーな手法を使った方が問題が早く解決する場合もあるので、抜け道的なものを知っておいた方が良いという思いから記事にしました。
良くない支援団体の実情を知って疑問を持った方もいれば、今までと変わらず共感するという方もいることでしょう。
その是非はさておき、ホームレスや当事者と直接の交流がある者としては彼らが生き残る事が最優先。
法的または道徳的にグレーな手段だったとしても、(明らかな犯罪行為でないのなら)そういう手段を使うのもやむを得ない場合もあるのではないでしょうか。
ココに注意
もちろん悪用するのは厳禁です。
もしあなたや身の回りの方が八方塞がりになりそうな状況なら、こういった支援団体を活用してまずは生き残りましょう。
もし償いが必要になったとしても、生き残ってさえいれば後でいくらでも償うことができます。
生き残らなければ罪を償う事すらできないので、まずは生き残りましょう。
後の事は後になって考えれば良いので、まずは生き残りましょう。