毎週述べ50人くらいの(現役・元)ホームレスや生活困窮者に会う仕事の中で直接見聞きした事をお届けする「貧困正味の話」。
今回のテーマは「なぜホームレスなのに生活保護を受けないのか?」
その理由を現役・元ホームレスに直接聞いてみました。
実際に見聞きした話に限られているので少数派の意見かもしれませんが、これも紛れもない事実の一つです。
全体的な傾向や一般的なケースではない「正味の話」を覗いてみたい方はぜひご覧ください。
もくじ
- なぜ?|ホームレスが生活保護を受けない理由10選【貧困正味の話】
- その1:生活保護の対象にならないと思い込んでいる【ホームレスが生活保護を受けない理由】
- その2:貧困ビジネスに遭ったことがある【ホームレスが生活保護を受けない理由】
- その3:水際作戦に遭ったことがある【ホームレスが生活保護を受けない理由】
- その4:家族の現状を知りたくない【ホームレスが生活保護を受けない理由】
- その5:家族に知られたくない【ホームレスが生活保護を受けない理由】
- その6:制度に頼りたくない【ホームレスが生活保護を受けない理由】
- その7:集団生活ができない【ホームレスが生活保護を受けない理由】
- その8:再申請に行きづらい【ホームレスが生活保護を受けない理由】
- その9:何かから逃げている【ホームレスが生活保護を受けない理由】
- その10:全てを諦めている【ホームレスが生活保護を受けない理由】
- まとめ:生きる権利は意外に脆い?【ホームレスが生活保護を受けない理由】
なぜ?|ホームレスが生活保護を受けない理由10選【貧困正味の話】
ホームレスが生活保護を受けない理由10選
- 生活保護の対象にならないと思い込んでいる
- 貧困ビジネスに遭ったことがある
- 水際作戦に遭ったことがある
- 家族の現状を知りたくない
- 家族に知られたくない
- 制度に頼りたくない
- 集団生活ができない
- 再申請に行きづらい
- 何かから逃げている
- 全てを諦めている
その1:生活保護の対象にならないと思い込んでいる【ホームレスが生活保護を受けない理由】
- 借金がある
- 戸籍がない
- 住所がない
- 持ち家がある
- 車を所有している
- もう若くない
- まだ高齢じゃない
- 病気じゃない
- 障害を持ってない
- 以前受けてたけど失踪してことがある
こういった理由で「自分は生活保護の対象にならない」と思い込んで申請していない人が多く見受けられました。
一定の条件が必要なものもありますが、大事なのは「今生活に困窮している」ということですし申請に至っては誰でもできます。
申請してみて調整が必要なことがあれば対応すれば良いだけなので、申請すらしないのはとても勿体ないです。
ココがポイント
とても大事なことが浸透していないのは国や自治体の怠慢だと思うのですが・・・
その2:貧困ビジネスに遭ったことがある【ホームレスが生活保護を受けない理由】
これまでに貧困ビジネスで酷い目に遭ったことがトラウマになって申請しない人もいました。
業者が所有している施設に連れて行かれ、
- 一部屋で集団生活させられた
- 個室だとしても薄い板やカーテンで区切られただけ
- 生活保護費は業者が回収して月に数万円しか貰えない
- 山奥の施設に入れられて世間から隔離された
- 同居人が乱暴だったりイビキがうるさい
などなど・・・
他にも、保護費を受け取りに行く時はバスに乗せられて役所に行き、受け取ったらすぐにバスに戻らされる。
バスに戻ったら封筒ごと取り上げられて後日数万円だけ返ってくるといった悪質なケースもあるようです。
「また酷い目に遭うかも」と新たな申請をためらうのも無理はありません。
ホームレスの中には精神疾患を抱えている人も少なくないのですが、そういう人たちも「生活保護」と聞くだけで本能的に怯える場合もあります。
ココがポイント
ドラマやマンガの中だけの話かと思いきや実在する話だと知って衝撃を受けました。
その3:水際作戦に遭ったことがある【ホームレスが生活保護を受けない理由】
業者だけでなく、実は役所の対応がトラウマになって生活保護を申請しない人もいます。
- 強い口調で脅されて追い返された
- 今までの人生や人格を否定された
- 何かと理由をつけて申請を受理してくれなかった
中には、元刑事など強面の人を断り要因として雇っている場合もあると聞いたことがあります。
生活保護を申請しに行く時はただでさえ心身ともに疲弊している方が少なくないと思いますが、助けを求めに行った役所で酷い対応を受けてしまったら二度と生活保護を申請しようと思わないのも無理はありません。
ココがポイント
ワタシの記憶が正しければ全ての国民には生きる権利があったと思いますが、不当に申請を拒否されて生活保護が受けられず亡くなった方がいた場合、誰がどのように責任を取ってくれるのでしょう?
その4:家族の現状を知りたくない【ホームレスが生活保護を受けない理由】
変わった理由として「家族の現状を知りたくないから生活保護を申請しない」という方もいました。
- 親は生きているのか亡くなっているのか
- 兄弟は結婚しているのか独身なのか
- みんな健康なのか不自由なのか
ご家族に対してトラウマがあるのか心優しくて心配が故なのか、事情は人それぞれのようですが「役所の手続き=戸籍や身辺調査」と思っていて、知りたくないご家族の現状を目にしてしまうのではないかと不安になって生活保護を申請しないようです。
その5:家族に知られたくない【ホームレスが生活保護を受けない理由】
一般的にもよく言われてますし、実際に話を聞いてもやはり多いのは「家族に知られたくない」という理由で生活保護を申請しないケース。
- 家族のもとから離れた後ろめたさ
- 家族から酷いを受けたトラウマ
これもまた人によって理由は様々ですが、先ほどと同じように「役所の手続き=戸籍や身辺調査」と思っていて「何かの拍子で家族に居場所がバレるんじゃないか」と不安になって生活保護を申請しない人も少なくありません。
家族や親族への連絡を拒否していたとしても役所が勝手に連絡を取ってしまう事もあったようなので、こういう人たちの気持ちもよく分かります。
その6:制度に頼りたくない【ホームレスが生活保護を受けない理由】
「自分の力でやれる所までやりたい」と思っていて制度に頼りたくない人もいます。
単純な損得だけで言うと早めに生活保護を申請した方がラクなのは明白なのですが、本人の中にはこだわりがあるようです。
その背景にあるのは「その日暮らしに近かったとしても何とかやっていけている」という自信や、「ホームレス生活より制度や手続きの面倒くささの方がハードルが高い」という思い込みなどなど・・・
傍から見てると生活が厳しそうに見えますが、言われてみると確かに巧いこと生きていくスキルが高い人が多いように見えます。
ココがポイント
「そこまで困りきっていない」という人たちに多い理由という印象です。
その7:集団生活ができない【ホームレスが生活保護を受けない理由】
家が無い状態で生活保護を申請すると、賃貸アパートではなく施設や無料定額宿泊所などに入れられるケースがあります。
一部屋で複数の人と一緒に生活させられたり、個室であったとしても薄い板やカーテンだけで仕切られただけだったりしてプライバシーの欠片もあったものじゃない場合もあります。
中には同居人が乱暴だったりイビキがうるさ過ぎてイヤになって途中で行方をくらませる人もいます。
アパートに入れさせない理由として、
- 保証人や緊急連絡先がない
- 生活能力が心配されている
- 保護開始時の敷金や礼金を支給したくない
などいろんな理由は考えられますが、強制的に集団生活をさせられることによって路上生活に戻ってしまう人がいるという事実はホームレスが減らない状況を生み出してしまっている一つの要因のように思います。
その8:再申請に行きづらい【ホームレスが生活保護を受けない理由】
以前生活保護を受けていた人で、
- 不正受給で保護停止になったことがある
- 受給中に失踪したことがある
などという人が「再申請に行きづらい」と思って生活保護を受けていないケースもあります。
深い事情があったり、どうしても異常な行動をとってしまう事がある人もいるので当事者本人の気持ちも分かりますし、このことを厳しく注意したい役所や周りの人の気持ちもよく分かります。
やっちゃいけない事をやってしまった事に変わりはないので反省は必要なのですが、それが生活保護を申請してはいけない理由にはなりません。
実際に生活に困窮しているという事が大事なので、支援団体などに同行してもらうなりして申請に行ってもらいたいものです。
その9:何かから逃げている【ホームレスが生活保護を受けない理由】
あまり詳しく言える話ではないですし本人も詳しく話したがらない事も多いのですが、何かから逃げているという理由で生活保護を申請しない人もいます。
- 借金を踏み倒してきた
- 犯罪を犯したことがある
- 家族から酷いことをされた
などなど・・・
これまた理由は人それぞれですが、共通しているのは「足がつくのを避けたい」という事。
役所の手続きを通して居場所がバレる可能性が完全にゼロではない限り申請はしたくないと考えているのでしょう。
その10:全てを諦めている【ホームレスが生活保護を受けない理由】
こちらの記事でもご紹介していますが、心身ともに深く傷ついてホームレスになった人も少なくありません。
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人はなぜホームレスになるのか?|直接聞いた原因・理由【貧困正味の話】
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そういう人たちは全てを諦めているため生活保護の事も全く考えていないようです。
自ら命を絶つエネルギーすら無いので、無気力に空っぽの日々、空虚な時間をただ生きているだけという状態。
人から生活保護を勧められても「自分とは全く無関係の世界の話」として受け流してしまいます。
ココがポイント
そういう人を見ると「とりあえず生活保護を受けてみれば」と勧めたくなる一方、その人が受けた心の傷の深さを思うと何も言えなくなるのが悩ましい限りです。
まとめ:生きる権利は意外に脆い?【ホームレスが生活保護を受けない理由】
現役・元ホームレスに生活保護を受けない理由を直接聞いてみました。
生活保護を受けられない理由や申請を避けたい事情がある人がいる一方、受けられるのに行き届いていないケースもありました。
いろんなケースを知った上で思った率直な感想は「生活保護が正しく十分に浸透していない」ということ。
誰もがホームレスになる可能性がゼロではない限り、しっかりと情報を発信していくのが国や自治体の役目だと思うのですが、はっきり言って不十分だと感じざるをえません。
ココがポイント
制度や手続きなどが苦手だったり情報に疎い弱者と言われる人たちほど守られなければならないとワタシは思うのですが、「申請主義だから・・・」などと役所が受け身に徹してしまうと「知らない方が悪い」という話になってしまうのではないでしょうか。
今がこういう状況だという事を考慮すると、この国では「生きる権利」というものは意外に脆いものなのかもしれませんね。
実際に会った人たちの話に限られているので少数派の意見かもしれませんが、これも紛れもない事実の一つです。